江戸てんの柄はどう生まれる?デザイナーが明かす「鯉と枝垂れ桜」誕生秘話【柄小話 第1回】

はじめに
江戸てんの柄は、そのほとんどを自社デザイナーがゼロから制作しています。有名な浮世絵や伝統和柄をモチーフにすることもありますが、お酒や動物といった身近な題材も積極的に取り入れ、「和の粋を身近に感じてもらうこと」を軸に、甚平や作務衣というカジュアルな和装や普段使いのできるTシャツにライトな和の雰囲気を宿しています。
さらに江戸てんの柄づくりには、もう一つ大きな特徴があります。それは「抜染(ばっせん)」「捺染(なっせん)」というプリント技法の制約の中でデザインしていること。この技法ならではの表現方法や範囲の縛りが、江戸てんの柄に独特の味わいを生んでいます。
今回から始まる連載「デザイナーの柄小話」では、そんな江戸てんの柄一つひとつに込められたストーリーを、月1回ペースでご紹介していきます。第一弾は、江戸てんの中でも古参にあたる抜染柄「鯉と枝垂れ桜」です。
深堀り
江戸てんの柄づくりの考え方
江戸てんの柄は、浮世絵や伝統和柄だけに頼りません。動物やお酒など、身近なモチーフも柄のタネになります。それを甚平や作務衣というカジュアルな和装に落とし込むことで、「気軽に楽しめる和」という江戸てんらしさが生まれています。

抜染・捺染とは?——制約の中にこそ、江戸てんらしさがある
江戸てんの柄の多くは「抜染」という技法で表現されています。生地の染料を「抜く」ことで柄を出す技法で、抜いた部分は真っ白ではなく、生成りなど生地本来の色になります。プリンターで抜染液を吹き付けたあとヒートプレスの熱を加えると色が抜けて柄が浮かび上がるのですが、白っぽいのか、少しクリームがかった感じなのか…どんな色合いに仕上がるかはプレスしてみないと分からず、オペレーターも毎回ちょっとドキドキするのだとか。デザインデータは黒一色で作るため、実際の抜染後の見え方を想像しながら手を動かす必要があります。
もう一つの技法「捺染」は、染料を吹き付けるプリント方法です。抜染と同じく生地の通気性を保ちながら柄を入れられ、物理的な製版が不要でCMYKで表現できる色なら色数の制限がなく鮮やかな発色が持ち味。どちらも小ロットでの柄入れに向いています。
どちらもガーメントプリンター(生地ではなく、すでに縫製済みの製品にそのまま柄を印刷する機械)でのプリントになるため、既成のボディに印刷できる範囲には限りがあります。「何でも自由に描ける」わけではないこの制約こそが、実は江戸てんの柄デザインの個性を形づくっているとも言えます。

「鯉と枝垂れ桜」が生まれたきっかけ
「鯉と枝垂れ桜」は、江戸てんの柄の中でも古参にあたる抜染柄です。この柄が生まれたのは、当時入社したばかりのデザイナーが、社長から「鯉」というモチーフの指定を受けて制作したのがきっかけでした。
それ以前から江戸てんには様々な柄がすでに展開されていました。そんな中で、江戸てんらしさをどう自分のデザインに落とし込むか、そして抜染という技法の表現範囲の中でどう魅せるか——当時のデザイナーにとって、多くの気づきと学びが詰まった、思い出深い一枚となりました。
デザインでこだわった構図
もっともこだわったのは構図です。鯉が上を向き、ひれを羽のように大きく広げて泳ぐ姿を中心に据え、その周りを枝垂れ桜がしなだれるように囲みます。鯉の躍動感と、桜のたたずまいの静けさ。この対比を一枚の柄の中に共存させることを意識してデザインされました。

制作の裏側にあった試行錯誤
当時のデザイナーにとって、柄をデザインするためのIllustratorはまだ使い慣れていないソフトでした。様々な機能を試しながら、実際の写真や図録で鯉の姿をじっくり観察し、鱗の一枚一枚をソフト上で描き込んでいったといいます。まさに、デザイナーにとっての「初心の一枚」と呼べる柄です。
お客様の声に見る、この柄ならではの個性
この柄の商品を出し始めた頃、印象的なレビューが届きました。「鯉モチーフの商品は、鯉が背中を向けているデザインが多いけれど、この柄はお腹側が見えているのが珍しい」というものです。多くの鯉柄が背面を描く中、正面からお腹側を見せる構図は、実はあまり見かけない表現だったことが、お客様の声から見えてきました。
どんなシーン・アイテムにおすすめ?
「鯉と枝垂れ桜」は、甚平・作務衣・Tシャツと幅広いアイテムに展開しています。鯉は「鯉の滝登り」に代表されるように、古くから立身出世や成功の象徴として縁起の良いモチーフとされてきたと言われています。その意味合いも込めて、大切な方への贈り物にもぴったりです。もちろん、鯉というモチーフそのものが好きな方にも、ぜひ手に取っていただきたい一枚です。

FAQ
Q. 江戸てんの柄はどうやって作られていますか?
A. ほとんどの柄を自社デザイナーがゼロから制作しています。浮世絵や伝統和柄をモチーフにすることもあれば、動物やお酒など身近な題材を取り入れることもあり、いずれも甚平・作務衣などの和装や小物、和テイストのTシャツにふさわしいライトな和の雰囲気に仕上げています。
Q. 抜染と捺染はどう違うのですか?
A. 抜染は生地の染料を抜いて柄を出す技法で、抜いた部分は生成りなど生地本来の色になります。捺染は染料を吹き付けるプリント技法で、多色表現がしやすいのが特徴です。どちらも生地の通気性を保ちながら柄を入れられ、製版が不要なため小ロット生産に向いています。
Q. 「鯉と枝垂れ桜」柄はどんな商品に展開されていますか?
A. 甚平・作務衣・Tシャツなどに展開しています。
Q. この柄はどんな人におすすめですか?
A. 鯉の縁起を大切にしたい方への贈り物としてはもちろん、鯉というモチーフそのものがお好きな方にぜひ選んでいただきたい柄です。






